テニプリキャラとクリスマスのディズニーへ行こう! ―― 真田(シー)ver.





「真田のばか!」


そりゃ真田がこんなキャラじゃないっていうのはわかってるよ!どんなに頼まれたってしたくなさそうっていうのもわかってるよ!わかってるけど,これくらいでそんなむきにならなくたっていいじゃん!私だって,無理を承知で,たった一度の思い出作りで頼んでるのに!


時間を遡ること数分前。なぜかこの時代遅れとのクリスマスディズニーデートが実現し,そのときから私はずっとずっと我慢していたことがあったのだ。 いよいよ帰るという頃合いになり,最後の思い出作りにと私は覚悟を決めて切り出したのだ。


「真田!お願い!ミッキーのカチューシャつけて!」


そう,私は,真田にミッキーをつけさせて,私はミニーちゃんをつけて,写真を撮りたかったのだ。写真を撮るほんの一瞬だけでいいので,ミッキーのカチューシャをつけてほしかった。嫌がるだろうとは思っていたが,案の定真田は驚愕の表情を浮かべてはっきりと断った。


「なっ!俺はそんな情けないことはせんぞ!」


想像はしていたが,こちらとしては用意もしていたし,引き下がるわけにはいかなかった。


「たった一枚写真を撮るだけでいいの!ほんのちょっと付けてくれるだけでいいから!ほら用意もしてるから!」
,いつの間にそんなもの買ったのだ!たるんどるぞ!」
「夢の国ではたるんでないの!お願い!」


散々こんなやりとりをして,とうとう真田の堪忍袋の緒が切れたのか,まわりの人が一斉に振り返るほどの大きな声で怒鳴り付けられた。


「俺は同じことを何度も言わん!たるんどる!俺はそんなものは付ける気はない!しつこいぞ!」


まわりがちらちらと横目で私たちを見る中,そりゃ,真田がそんなのつけるの嫌いなのはわかってるよ。私がわがままなのもわかってるよ,でも,私はずっとずっと憧れてたんだ。大好きな人とディズニーに来て,ミッキーとミニーのカチューシャをつけて,歩くの。真田にとったら大したことじゃないのはわかるけど,私には大きな大きなことで‥。


気づけば涙がポロポロとこぼれてて,こんなことで泣くとは,たるんどる!なんて言われるのが嫌だったから俯いてたら,


「お,おい,,泣いているのか‥?」


真田の声色が思っていたものよりぜんぜん焦っていたから,見上げてみてみるとぼやけた視界の向こうに私を心配そうに見つめる,慌てた真田がいた。


「ごめん,無理言って」
「いや,俺も少し言い過ぎたかもしれん,すまない」
「ううん,私が諦めが悪かったから。ほんとごめん‥」


真田は珍しくおろおろとしていて,ものすごーく気まずい空気が流れていたが,気づけばたくさんいた人もまわりには一人もいなくなっていて,真田はしばらく何かを考えているように押し黙って,そして口を開いた。


「‥そいつを貸せ」
「‥え?」
「いいから,さっさとそいつを貸せ!」


そいつ,が何かわからなかったのだが,真田の視線を辿ってみると,どうやらこのミッキーのカチューシャを示しているようだった。え!せっかく買ったのに,付けるの嫌すぎて壊すの?!なら渡したくない!と渋っていると,私からミッキーのカチューシャをほとんど奪い,


「これで満足だろう!」


真田がカチューシャつけてる‥!びっくりして何故か爆笑してしまった。


「ぷっ‥あはは,なにそれ,あはは!」
「何だと!が付けてくれと頼むから付けたものを!それを笑うなんぞたる‥」
「いやそういう意味じゃなくて,そんな顔してつけるもんじゃないから!もっとにこやかに!」
「む?‥こうか?」
「いやぜんぜん笑えてないから!」


ミッキー真田はかなりツボに入ってしまったようでしばらく爆笑が止まらなかったが,落ち着いてから,念願の写真撮影が達成された。


「はい,チーズ!」
「‥」


泣いたばかりで目が真っ赤の私,恥ずかしそうにふてくされた真田,一生の宝物になった。


「真田,泣いたりしてごめんね。ありがとう」



(不本意ではあるが,笑ってくれてよかった)







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